北村匠海の人生を変えた映画3選
Esquire:ここ数年、日本の映画作家の評価は世界に届いているように見えますし、若い方たちも、どんどん出てきている状態だと思います。その中で、おすすめしたい「自分が本当に愛している映画」を挙げるとしたら?
北村:僕が好きな映画は、邦画かフランス映画にあるんですけど。学生時代にいちばん衝撃を受けたのは岩井俊二監督でした。僕は『undo(アンドゥ)』という47分の中編から入ったんですけど、これは母の影響もあります。うちの父は「『ゴッドファーザー』を観ろ」というような父で、いっぽう母は「岩井俊二さんとか、そういう良い邦画をたくさん見なさい」と。
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それは別に、僕が役者をやっているからということではなく、シンプルに「かっこいいものに触れなさい」ということだったんだと思います。『undo』から始まって『PiCNiC(ピクニック)』『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』 ── そのあたりが、僕の人生で「好きな映画の方向性」を決めた作品ではあります。今観ても新しいし、岩井監督のいわゆる三部作── 僕の人生を語るには欠かせない作品です。そこから僕は映画館に通い詰めるようになって。1000円で3本見るとか、高校が終わったらそういう生活をしていました。
『PiCNiC(ピクニック)』『スワロウテイル』、そして『リリイ・シュシュのすべて』
僕が好きな映画は偏りがあるのかもしれないですけど、「人生に説明できない感情をもたらしてくれるもの」だと思うんです。当時の自分の語彙力では良さを説明できないけど、「めちゃくちゃ良かった」っていう感情 ── それが映画が与えるべき感情なんだって。それが説明できてしまったら、途端に専門的な見方、批評になってしまう。そうじゃなくて、「いい時間だったな」っていう。僕は当時、映画館では岩井監督の作品を観ていなくて、伝手を頼って借りたDVDで、家で一人で観た2時間が忘れられなくて。その感情を、僕は今でも持っています。「説明できる良さ」じゃなくて、「説明できない良さ」── それがエンタメが負うべき感情だと思っていて
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#01 《リリイ・シュシュのすべて》ある事件がきっかけで生まれた作品/台湾上映記念 Online Event
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岩井監督の作品を絞るとするなら、『アンドゥ』、『リリイ・シュシュのすべて』、『スワロウテイル』。岩井監督の作品には、「人を動かす力」があると思います。『キミスイ(君の膵臓をたべたい)』(2017)のときに、月川(翔)監督とも、岩井俊二監督の作品の話をしていて。「やっぱり、いろんな人があの時代の作品に突き動かされて、今それを追い求めているものがあるんだな」って。
僕と同じ感覚の人はきっとたくさんいると思うんです。僕が出会ってきた監督や役者は「あの良さを模倣する」んじゃなくて、「あの感情にまたたどり着くため」に映画を作り続けている ── それが、作品が映画人をもっている感じだと思います。
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Esquire:『しびれ』(公開中の主演映画。内山拓也監督作品)にも、その「説明できない良さ」を感じましたか?
北村:すごく感じました。「誰かを動かすはずだ」と。この映画を説明するというか、受けた感情を言葉にするのって……もう今こうやって取材していただいている手前、言うのもあれなんですけど(笑)、大地から言葉を奪った時点で、この映画に言葉なんて必要なくて……。「感じてくれ」「大地と一緒に見つめてくれ」 ── それが、この映画だと思います。大地の視線、視点を通して感じてほしい。
最初のワンシーンで、この映画はすべて説明されている気がします。あそこで何が起きているか、ではなくて、大地だけをクローズアップして、あの一言から物語が始まるから……。
僕が映画に俳優人生を動かされたように、この『しびれ』という映画は、きっと誰かの人生を動かすだろうと思っていますし、あの「説明できない良さ」というものが詰まっていると思っています。
(c)2025「しびれ」製作委員会『しびれ』(公開中)
日本海沿いの町で言葉を発しない少年・大地。夜の仕事に生きる母・亜樹と貧しく暮らし、叔母の家に身を寄せるも居場所はない。父を捜し生家へ向かうことで揺らぎだす運命。孤独の中でかすかな光を手繰り寄せ、大きな愛を知るまでの20年間を、北村匠海主演・内山拓也監督がリアリズムに根ざした視点で描く。 公式サイト
Model / Takumi Kitamura
Directors of Video / M.Tikal
Photographs / Allan Abani
Styling / Rina Maruo
Hair-Makeup / Rina Ohara
Realization & Text / Keiichi Koyama
